イメージアルバムとサウンドトラックの違い
イメージアルバムとは
イメージ・アルバムは、サウンド・トラックに先行して作られる。手がかりになるのは、作品のイメージを伝えるイラストや言葉だ。それらをもとにして作られるのがイメージ・アルバムだ。
(「I am -遙かなる音楽の道へ-」 / 久石譲 1992年)37pより引用
わかりやすく言えば、音楽打ち合わせを具体的に進めるための叩き台みたいなものでしょうか。
音楽で「ロマンスっぽく」とか、「ババババッと走る感じ」とか。
そんな抽象的な言葉だけで打ち合わせを進めるのは大変でしょう。
そんな時に、
「ここではあの曲のこの部分を」
とか、
そんな感じで打ち合わせができれば
具体的で効率がいいはず。
・・・と思ったりしますが、実はそうでもないらしい。
イメージ・アルバムがあるから、楽だろうか。実は、逆なのだ。具体的なものがあるために、「ここは、こんな風な音楽で」というような抽象的な表現にならないのだ。
「ここからここまでは、メーヴェのこのメロディをこう使って、前半はモニョモニョと始まって地面から現れるのを表して、一回メロディを退いて、それを途中で切って、あとは不安な感じのメロディで……」
と、非常に具体的な話になってしまうのだ。
(「I am -遙かなる音楽の道へ-」 / 久石譲 1992年)45pより引用
どうやら具体的にできるからこそ、非常に熱の入った打ち合わせになっていくようです。
まあ、考えてみれば当然といえば当然ですが、
これのおかげでナウシカの時には
昼の十二時から初めて、明け方の四時か五時までという打ち合わせを、二回もやった。
(「I am -遙かなる音楽の道へ-」 / 久石譲 1992年)45pより引用
というのだから、その大変さが思い知れます。
サウンドトラックとは
サウンドトラックは、実際に劇中で使用される音楽のことを指すことが多い。最近ではOST(オリジナル・サウンド・トラック)という言葉で劇伴曲であることを示すこともあるようです。
ジブリ音楽の場合にも、CDにサウンドトラックと書いてあれば、それは劇中で実際に使用された曲が集まったCDのことです。
とはいえ、全ての曲が収録されているかというと、まあそうではないのですが。
主だった曲は収録されていますので、
「音楽を聴いて映画の場面を思い浮かべたい」
という人は、このサウンドトラックを購入すると良いでしょう。
イメージアルバムとサウンドトラックの違い
まとめると以下のようになります。
- イメージアルバム ・・・ 音楽打ち合わせのための叩き台。劇中音楽の原点
- サウンドトラック ・・・ 劇中で実際に使用された音楽
という風になります。
なので、
となります。
原点というのが、非常に面白いところで、
たとえば
君をのせてのメロディがイメージアルバムでは一部違っていたり
(歌詞がつくより前のメロディが、歌詞がついたことによって変更されたことがわかる)
もののけ姫の伴奏が和風だったり
(後にボーカルが米良美一に決まって宮﨑駿監督の要請によりクラシカルに変更)
他にも予告編でのみ使用された曲があったり
(映画本編未使用曲だったりする)
そういうのが聴けるのが、 イメージアルバム です。
楽曲の進化の過程
わけのわからないタイトルかもしれませんが、
このように楽曲が進化していくと考えられます。
イメージアルバム
↓
サウンドトラック
↓
ソロアルバム
つまり、
曲の原石が
↓
具体的な打ち合わせを経て磨かれ
↓
作品としてきちんと飾られる
イメージアルバムは、上記の通りキーワードやイラストを元に曲を制作するもので、
サウンドトラックは、その曲を映画の尺に当てはめていく作業です。
では、ソロアルバムとは?
こうして一般大衆に知られるようになった曲を、一つの作品としてまとめあげる作業が加わります。
つまり、映画の劇中では、尺の都合で一つの曲(例えばA→B→Cと展開する曲)が、
ある場面では(A→B)まで、ある場面では(B→C)までが引用されて使われたりすることがあるのです。
それを、本来の(A→B→C)の形に戻して、再構成することができるのが、ソロアルバムなのです。
久石譲のソロアルバムには、こうして再構成され、1つの楽曲として完成した曲がいくつも収録されています。
詳しくは、ソロアルバムの中のジブリ楽曲のページをご覧ください。